おわりに

 今回は、イタリアの山岳地帯ドロミテ地区を主に13泊の後、続いて、ミラノから海岸地帯サルジニア島に渡り11して、ローマ経由で帰国した。サルジニアは、シシリー島に次いで地中海で2番目に大きい島であるが、これといった観光資源もなく、交通の便が悪いので、日本からの団体旅行もほとんど企画されてないし、したがって日本語の本格的な観光案内書もまだ出ていない。地球の歩き方「イタリア」で、ほんのわずかなページを割いて紹介されてはいるが。

 外見から国籍まで推察できるのは、人口の多い国民では、世界で、日本人、中国人、インド人ぐらいで、これらの国の人の観光者は、旅行中一人も見かけなかった。西洋人は国籍を見分けることが不可能だが、これが分かれば、興味深いことが発見できると思うのだが。何故なら、この島で一番人気のある観光は、海岸での日光浴であるらしいからである。「海水浴」ではなく「日光浴」、あるいは、「無想あるいはストレス解消」、「家族慰安」主体の場であることは、当地に限らず、地中海領域では一般的な現象であり、日本の海水浴場とは対照的である。特にこの島では、泳いでいる人の割合が少ないし、飲み物やアイスクリームなどを販売しているところや、パラソルや椅子はあっても、休憩したり軽食が取れる日本の海の家に相当するものは無いし、シャワーがあるところもほとんど無く、音楽は勿論無いし、ビーチバレーもなく、わずかにスマホを見ている人がいる程度である。多分、近くにホテルか、別荘があるのであろう。ほとんど無言で、唯、寝そべって日光浴をしながら瞑想しているか寝ている人がほとんどである。日光浴する人にも2派あって、人の多いところを好み、しかも隣の人ともある程度は近くにいたい集合派と、なるべく人とは離れてひっそりしていたい孤独派がいる。海岸に限らず、この島でジョギングしている人は見なかったし、はっきりと散歩している人も見なかった。

 カリアリの街にはあるのかもしれないが、中華料理店は一度も見たことはなく、団体旅行のバスに1回だけ遭ったが、人家もトイレも無いところで、野外トイレ休憩をしていて、女性も従っているところを車で通りすぎてどこの国の団体旅行か知らないが大変驚いた。今までの旅行で経験したことがない。カリアリには、少なくともモスクワから週1回、直行便は来ているので、ロシア人の団体旅行であるのかもしれない。ホテルも安価で、太陽も一杯なので、海にも遠い北国のロシア人(モスクワなど)にとっては、特に楽園なのかもしれない。

 観光の見地からすれば、アルゲーロとそこから船で行けるネプチューンの洞窟とその周辺の風景が一番である。他に例を見ない村は、壁画で満ちたオルゴソーロであろう。エメラルド海岸では、超金持ちの方の船や別荘を見たが、そういう金持ちの人は、外に出る必要もないのか、それと外見から明らかに分かるような人は見かけなかった。

 2013117日に世界最長寿9人兄弟がギネスに認定されたそうで、その時点で長女が106歳で、一番下が6女で78歳で、9人の合計が、818歳で、平均90.9歳である。同島の100歳以上の約2500人を調査し、その要因を解析したサッサリ大学の臨床生理学専門のデェイアーナ教授は長寿の要因をまとめて(1)遺伝的なもの、(2)食べ物(島特産の洋ナシ、プルーン、赤ワインを112杯、野菜中心の質素なもの)、(3)生活習慣(どこの家も高齢者を大事にするので、長生きしてもストレスが少ない)。この島の100歳以上の人は、4000人に1人で世界平均の2.5倍である。しかし、旅行中、高齢者をほとんど見かけなかった。

多分、観光者が通るようなところには、超高齢者はいなく、更にのんびりした所におられるのであろう。

 わずか12日間のイタリア語も解しない一観光者の感想であるが、以下のように総括した。

 山は適度な量と高さで、また、夏期には殆んど雨が降らなく、給水に限りがあるから、土地はあっても農業もそう発展が望めないだろう。無限に近い美しい海岸以外に、さしたる観光の目玉もなく、観光産業に頼ることも出来ない。道路は、整備されていて、車には便利だが、列車やバスは、需要もない為か、当てにできる交通機関ではない。従って、イタリアのみならず、他国の超大金持ちの別荘はあっても、島の住民で大金持ちになれる条件は成立していない。一方、地中海に囲まれ、年間、温暖で、食べ物も、魚類、野菜、果物類が多く、空気がよく、歓楽街もなく、ストレスも少ないから「スローライフslow living)」に適し、健康にはよい所であり、多くの日本人の方に向いた観光地ではないだろう。実際、旅行中、日本人ばかりでなく、最近ではどこでも日本人の数倍は見かける中国人観光客も見かけなかった。今まで訪問した地中海の島々の中で心が癒される点では、最上位に属すると思う。ただし、実際の住民の実際の生活は短期の旅行者に分かるはずもないことも分かった。